これまで言われて来ている、Quality of Life(QOL:生活の質)という言葉に、これからは、頭にHumanのHを加えて、Quality of Human Life(QOHL)、より人間らしい生活の質を求めることを意図する、QOLからQOHLという表現するように時代が要求して来ています。
その理由として、例えば新型コロナの重症感染者のように単なる生命の維持と保存、延命という治療中心から、その人(患者さん)の生活の質とその内容が“ヒトとして人間らしい生き方をまっとうすることの大切さ”が問われてきています。従来のQOLという言葉は、手術の緊急時期の後のICU(集中治療室)の中で用いられてきた言葉です。感染を抑え、呼吸と心臓、栄養を与えて、新型コロナの重症感染者のように、ただ単にまず生命を延長する、家族も生きていれば、医療者側も生かしていれば良かったという昔の時代に生まれた用語でした。これからは施設や病院での管理や治療も、単なる生命維持の管理から、より人間的な内容、生き方の質=QOLからQOHLを問われる時代になってきました。
そのようにただ、延命をして生かしているだけの時代は終わりを告げています。また緩和ケア病棟などにおいても、単に痛みがない、生き永らえるの延命だけを目標にしないで、その患者さんに可能な全人的な生活の質をどう高めていくかにエネルギーを使う時代になりました。
その人個人、そして家庭人、社会人として、生活の楽しみや仕事の質的な向上にかかせないのが、お口や歯、顎、顔の役割(機能)です。しゃべることや食べること、美味しい食事を楽しむこと、美味しい空気を吸い、自由に歌い、言葉と食事、顔と顔を見合わせて、多くの人々とコミュニケーションすることなど、これらの要素のそのほとんどは、お口や歯、口腔と顔面を介して行われる人間らしい行為だからです。そしてこれらの機能は、食べるという、単に生物としてのヒトの生存や存在価値だけではなく、個人的、社会的な人間としての自己存在をその地域、さらにはより遠く(世界)へ向けてアピールする役割があるからです。
お口の役割がより見直されて、生活の質(QOL)の時代から、その人を中心とした、次のより人間らしい質を求める時代(QOHL)に方向が変わってきたのです。その人間らしさの基本は、すべて自分の歯やお口、顎や顔を使うことから始まるのです。
前院長 松本晉一
From “Quality of Life” to “Quality of Human Life”
生命の価値から“人としての価値へ”の大切さへ
では、コロナ禍の中で、コロナに負けない体力づくりのために、「お口の力と唾液の力」と「歯周病」を例にいくつかコメントしてみましょう。
お口は、いつも唾液で潤っています。ご飯の時は勿論、唾液はしゃべる時、歌う時、寝る時に1日1.5Lも出るのです。その役割は、嚥下や食塊形成、自浄清掃作用や味覚形成作用の他にも、唾液内の様々な物質による免疫作用、抗菌作用、ホルモン作用と共に、溶解、消化、潤滑、緩衝、成長促進作用がありコロナ感染防止にも効果!があります。口の乾燥をさけ唾液をしっかりと溜めて、鼻の汚れと一緒に胃の方に落します。お口のスマイルで気分もリラックスして唾液が出て、ボケも予防出来ます。
<唾液の成分>
水分:99.5% Ph:6.8〜7.0中性、
無機成分:ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、炭酸水素
有機成分:免疫グロブリンA、ラクトフェリン(抗菌)、リゾチーム(抗菌)
ムチン(菌凝集)、アミラーゼ(酵素)、パロチン(成長ホルモン、歯骨の石灰化)
耳下腺:副交感神経作用=サラサラした唾液分泌
舌下腺:交感神経作用=ネバネバした唾液分泌
顎下腺:両方の作用、神経や上皮を修復、成長させるNFG因子、EFG因子がある
小唾液腺:口唇腺、口蓋腺、頬腺、前舌腺、エブネル腺
<唾液成分の役割>
1、免疫グロブリンA (IgA抗体)
病原体を無力化するタンパク質で、粘膜での防御機構として働く。軽いストレッチで増加
2、ラクトフェリン
唾液や母乳中にあり、細菌の増殖を抑える
3、リゾチーム
主に細菌細胞壁に含まれる、糖タンパク質の一種を加水分解する酵素で、
抗菌物質や、傷口を早く治す上皮成長促進因子となる
4、ムチン
”ムチン“は多糖体で魚のヌルヌル成分(ムチン型糖蛋白質)と同じ。
粘膜を潤し、菌を凝集させ「菌塊」として口の内から排出、胃壁の保護や修復する作用を持つ
5、アミラーゼ
唾液のアミラーゼは漿液性(サラサラ)唾液にのみ含まれ、炭水化物の消化をする
6、パロチン
唾液中の成長ホルモン、骨や歯の再石灰化、老化防止効果
7、EGF、NGF(神経・粘膜上皮成長促進因子)傷口を早く治す物質
8、ビタミンC食品(果物 緑茶、のり、ゆず)⇒唾液産生
毎日、美味しいものを食べ、しゃべり、歌い、笑うことで、
お口の力、唾液の力が健康を保ち、やる気を増します!
〇唾液を出すために:水分はしっかり摂っても、食事中は水、お茶で流しこまないこと。
サザエさんの漫画には湯呑がありません。そのことは食事中には食べ物をお茶や水で流しこまない習慣が大事です。ファミレスの水コップはよくない習慣です。唾液を出すには、良く咬むおかず、おやつ、雑穀米を摂る。おかずはミジン切よりステック状に。食パンは耳を付け、さらに焼いて食べるなどの工夫が大事です。
「歯周病の恐さ」=症状が静かに、ゆっくりと、痛くなく進行することです。進行がゆっくりしてる点は高血圧、糖尿病と同じように生活習慣病なのです。でも、原因がはっきりとしており、歯周病を起こす感染源の細菌はグラム・マイナス(酸素を必要としない)桿菌類(棒状の形の菌)が主で、プロフィロモーナスジンジバーリス、プレボテーラインターメデイアなどが原因菌です。これらが知らないうちに、その感染が隣の歯や他の部位、組織に波及するのです。
歯周ポケットに住み着いた、歯周病の細菌は、歯の周りの毛細血管を通じて、細菌の持っている内毒素(エンドトキシン)という毒素を全身にまき散らし、全身の免疫細胞との戦いの中で発生する物質が、動脈硬化、血管障害など身体の機能を狂わせてきます。
その一つがサイトカインです。サイトカインは血糖値を下げるホルモンのインシュリンの分泌を阻害します。そのため血糖値が上がり、糖尿病などの各種の成人病症状が悪化することが知られています。
また歯周病は妊婦の場合では、早産による低体重小児を生むリスクが、2.8倍も高くなります。特に妊娠中はホルモンバランスが崩れるため、歯周病に感染しやすく、歯周病になりやすい条件がそろうためです。そのため特に早産を招きやすい絨毛膜羊膜炎を発症しやすい妊婦に、抗菌剤を飲んでもらった結果、極小体重児の発生率が、過去5年間平均の30%まで減少した報告があります。このことは歯周病がすぐに早産につながるわけではないのですが、「自分のお口の中のことが、次世代の子どもの命にかかわること」を知ってほしいのです。それはタバコやお酒の問題も同じです。
医院名称 | 松本歯科医院 |
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開設者名 | 松本晉一 |
開設年月日 | (旧)昭和20年12月27日 松本歯科診療所(開設者 松本三男) (新)昭和57年3月24日 松本歯科医院(開設者 松本晉一) |
診療科目 | 小児歯科・矯正歯科・歯科 |
開設場所 | 〒868-0035 熊本県人吉市五日町75番地 |
電話&FAX番号 | 電話:0966-22-2928 FAX:0966-25-1360 |
ホームページ | http://matsumoto.hp-kuma.com/ |
院内構成 | 歯科医師・・・2名、歯科衛生士・・・2名、歯科技工士・・・1名、歯科助手・・・・2名 |
設備・装置 | 診療台(ユニット)4台・麻酔器2台・X線装置2台 |